伊勢志摩備長炭
ウバメガシの切り出しから精錬まで丹精込めた作業
職人自らがウバメガシの原生林に入り、5トンもの原木を切り出すところからスタートしています。
原木を1本ずつ丁寧に木ごしらえをし、窯にぎっしり詰め込んだら、15~20日の時間をかけて、じっくりと蒸し焼きしていきます。
その間も随時、窯の中の状態を職人の経験と勘を駆使して匂いや煙の色で判断し、火や釜口の調整を行わなければなりません。
1,000℃を超える高温で焼き上げた炭を取り出し、灰をかけながら1~2日かけてじっくり冷やすことで、硬くて高品質な伊勢志摩備長炭が完成いたします。
料理をおいしくする高級伊勢志摩備長炭
丹精込めて作り上げた伊勢志摩備長炭は燃焼させることで、遠赤外線と波長の短い近赤外線が放出されます。
近赤外線は熱伝導率が高いため、肉や魚などの表面を加熱し、旨味成分であるグルタミン酸などを逃がさない働きをしてくれます。一方、じっくりと伝わる遠赤外線が、食材の中までしっかり火を通すので、旨味を閉じこめて逃しません。
2つの赤外線作用により、外はカリッと香ばしく、中はふっくらジューシーに焼き上がり、旨味がたっぷり詰まった濃厚な味わいと食感の良さを楽しむことができるのです。
先に表面が焼けるので食材の水分も逃さず、肉汁も閉じこめられます。脂肪分の少ない鶏むねなどを焼き鳥にしてもパサパサにならず、ステーキやハンバーグは肉汁したたるジューシーな味わいが堪能できます。
炭火おこし方法をご紹介
店内でのコンロを使った調理や屋外でのバーベキューコンロでも基本的な火の起こし方は同じです。
まず、コンロに着火剤を置き、その周りを囲むように備長炭を置きます。空気が通り抜ける空間を作って積み重ねるのがポイントです。
着火剤に火をつけ、うちわなどで仰いで風を送ってください、火の粉が舞うので、火傷したり、周囲に燃えやすいものを置いたりしないよう注意しましょう。
炭に火が回ったら、火がついた炭を平らにし、その上に新しい炭を乗せて、うちわで仰いで風を送ります。炭の炎が落ち着き、白っぽくなったら火起こしができた合図です。
伊勢志摩の里山再生に向けた取り組み
近年、備長炭の原木となるウバメガシの森は、キクイムシによる被害が拡大し、大きな問題となっています。
これは炭や薪を作るために乱獲したからではなく、逆に人の手が入らなくなっているためです。古来より、薪や炭の原木調達のために人が一定の手を入れることで、森が更新され、健やかな状態に維持されてきました。
現代社会においてガスや石油、電気といったエネ ルギーへのシフトが進むほど、森に人が入らなくなっていきます。手を加えられないまま老木となり、衰弱した木が増えたことでキクイムシが繁殖しやすくなっているのが現状です。
原生林とは異なり、一度人が手を入れた森は人が責任を持って守っていかなくてはなりません。
炭の生産は人と森が共存してきた伝統の技であり、文化です。
里山再生に向け、伊勢志摩備長炭の技術を受け継いでいくことが、我々の使命です。
伐採を積極的に行い、良質な国産の備長炭を作り続けていくことで、里山の復活と共存を目指してまいります。